サブバッテリーシステムの部位別に使うべき電線の太さと種類を解説【ネツタフ】

サブバッテリーシステムを設置する上で迷うのがKIV電線の太さの選定です。

この記事ではどこにどんな太さの配線を使うのが良いかと使うべき電線も解説します。

これでもう電線の太さに悩むことはありません。

また、よくあるこの電線の許容電流は○○Aだからこの太さで大丈夫なんていう選び方がいかに危険かも解説していますので、最後まで読んで安全なサブバッテリーを構築して下さい。

部位別電線の推奨太さ

車両バッテリー⇔走行充電器

推奨サイズ:使用する走行充電器の推奨値

RENOGY製走行充電器50Aなら22SQです。

なお、この配線には80Aのヒューズを入れることが推奨されています。

ヒューズは極力車両バッテリーに近い位置に必ず入れましょう。

走行充電器⇔サブバッテリー

推奨サイズ:使用する走行充電器の推奨値

RENOGY製走行充電器50Aなら14SQ、60Aのヒューズが推奨です。

ヒューズは必ず入れましょう。

ヒューズブロック⇔サブバッテリー

推奨サイズ:5.5SQ

ヒューズブロックに接続するのは冷蔵庫、FFヒーター、照明、モニター、USB充電器くらいですが、安全マージンを取って5.5SQがおすすめです。

シャント⇔サブバッテリー

推奨サイズ:22SQの二本掛け

バッテリーモニターを取り付ける場合のシャントとサブバッテリーをつなぐ電線は、22SQを2本つなぐのがおすすめ。

この電線に流れるインバーターの最大電流は以下の通りになります。

2000Wインバーター

2000W/12V=167A
167A/0.9(変換効率)=186A

1000Wインバーター

1000W/12V=83A
83A/0.9(変換効率)=92A

KIV電線の許容電流(周囲温度30℃)
22SQ 115A
38SQ 162A

1000Wのインバーターの最大電流は92Aですので、ヒューズブロック等に接続した機器と同時使用すると22SQ一本では許容電流(115A)を超える恐れがあります。

また、2000Wのインバーターの最大電流は186Aですので、38SQ一本ではインバーターだけでも許容電流(162A)を超えてしまいます。

以上の理由でサブバッテリーシステムにインバーターを取り付けるのであれば、シャントとサブバッテリー間は22SQの二本掛けがおすすめです。

おすすめの太さのネツタフで配線しよう

普通のKIV電線はハッキリ言って車向きではありません。

後ほど詳しく説明しますが、普通のKIV電線はその周囲温度が60℃になると許容電流がゼロになってしまいます。

なので、普通のKIV電線より許容電流が大きく、高温環境にも強いネツタフ115という電線をおすすめします。

先ほどおすすめした太さのネツタフ115を使って配線することで安心して電気機器を使用できます。

また、ネツタフは高性能ですが普通のKIV電線と同価格帯なので使わない理由がありません。

注意

二本掛けの一本でも断線や不導通、端子のゆるみがあるともう一本に過負荷が掛かり溶けたり燃えたりといった事故になる恐れがあります。
またDCエアコン等大電流の機器を使用する場合は22SQの二本掛けでも許容電流を超えてしまう場合があります。
自己責任でしっかり選定、取り付け、点検をして下さい。

ネツタフ115の入手方法

私の知る限り楽天のKUROGISYOTENというショップが唯一ネツタフ115を1m単位で切り売りしています。

こちらのショップなら22SQは10cm単位の切り売りもしてくれますし、端子の圧着は1カ所50円。

ANLヒューズやホルダー、裸圧着端子なども安いので一緒に買いそろえましょう。

※価格をクリックすると商品ページに飛びます。

ネツタフ価格表(2025年01月22日現在)
SQ
0.75 60円/m 60円/m
1.25 80円/m 80円/m
2 100円/m 100円/m
3.5 350円/m 350円/m
5.5 450円/m 450円/m
8 700円/m 700円/m
14 1,100円/m 1,100円/m
22 150円/10cm 150円/10cm
1,500円/m 1,500円/m
38 2,200円/m 2,200円/m

電線のダウンサイジングが危険な理由

サブバッテリーシステムでは基本的にKIV電線を使用します。

KIV電線は細い素線を束ねた導体を絶縁体で覆ったいわゆる電線ですが、普通のKIV電線よりも許容電流が大きいHKIV電線というものがあります。

KIV電線、HKIV電線はJIS規格で仕様が定められているので、メーカーによって性能にほとんど差がありません。

また、私がおすすめしているHKIV電線のJIS規格よりも許容電流が大きい(S)HKIV電線(ネツタフ115等)もあります。

よくYouTubeやブログで「ここには90Aの電流が流れますが、ネツタフなら8SQで97Aまで流せるので大丈夫です!」などと紹介されていますがこれ実はとても危険。

ここではその危険な理由を解説します。

危険その1:絶縁体が高耐熱なだけで導体は高温になる

この記事を読んでいる方はご存じだと思いますが、流す電流が大きいほど電線は発熱します。

電線に流す電流を大きくしていき絶縁体が熱に耐えられる限界が「許容電流」になります。

HKIV電線や(S)HKIV電線は導体が発熱しないのではなく、より熱に耐えられる素材の絶縁体を使っているのでその分大きい電流を流せるだけなのです。

KIV HKIV ネツタフ
耐熱温度 60℃ 75℃ 115℃

上の表はKIV電線の絶縁体の耐熱温度です。

多少マージンがあるでしょうが、許容電流の上限まで電流を流すと耐熱温度付近まで導体の温度が上昇します。

つまり先ほどのネツタフの8SQに90Aを流す例の場合、導体温度つまり電線の端子は100℃を超えます。

電線の絶縁体は耐えられても、バッテリーや走行充電器等のケースは耐えられるでしょうか?

その答えは分かりませんが、少なくともそんなギャンブルをしてまで電線を細くする理由がないことだけは分かります。

危険その2:そもそもKIV電線の22SQなら115A流せると断言できない

KIV電線の許容電流(周囲温度30℃)
KIV HKIV ネツタフ
2SQ 22 26 40
8SQ 57 68 97
14SQ 83 99 145
22SQ 115 135 180
38SQ 165 195 225

上の表はKIV電線の許容電流です。

「なんだ22SQなら115A流せるじゃねーか!タイトル詐欺かよ!」と怒られそうですが、よーく見て下さい。

周囲温度30℃と書いてあります。

そう、許容電流というのは電線の周囲の温度によって変化するのです。

もっと言えば、周囲温度が高くなればなるほど許容電流は小さくなります。

上の表は周囲温度が30℃以外の場合の許容電流の補正係数です。

夏場なら70℃以上になることもある車内温度。

「ここには90Aの電流が流れますが、ネツタフなら8SQで97Aまで流せるので大丈夫です!」とやってしまうと、炎天下に停めた車が冷える前に90A流してしまうと45℃で許容電流を超え、端子は100℃以上となり大変危険なのです。

圧着端子と工具について

最後に配線作業に欠かせない圧着端子と圧着工具について説明します。

KEBは1.25~5.5SQまでは絶縁被覆付圧着端子、8SQ~は裸圧着端子を使用しています。

絶縁被覆付圧着端子はとても便利ですが圧着工具が8000円~と高価で、端子自体もお高めです。

予算が許せば絶縁被覆付圧着端子がおすすめですが、すべての端子を裸圧着端子にしても全く問題ありません。
絶縁キャップとセットで使いましょう。

KEBはサイズ別に2つの裸端子用圧着工具を使用しています。
どちらも問題なく使えていますのでおすすめします。

太い電線をニッパーで切断するのは非常に大変です。
ケーブルカッターがあると作業が捗ります。

電線の被覆を剥く工具が1つあると大変便利です。
電装系カスタムの必需品ですのでぜひ一つは持っておきましょう。

まとめ

周囲温度が上がらないように、サブバッテリーシステムの廃熱も考慮しましょう。

また、端子の圧着と締付は確実に行いましょう。
緩みがあるとスパークしたり抵抗が増えたりで発熱、結果簡単に溶けたり燃えたりします。

安全マージンをしっかり取って、楽しい車中泊を!